- 食事だけはおいしいものを食べさせてあげたい
- 高級老人ホームなら毎日おいしい食事が出る?
- 食事がまずい施設に預けてしまったら後悔しそう
私は病院・介護施設で18年間、食事の現場に立ってきた現役の管理栄養士です。正直な話、入居費用が高いから安心とも言えませんし、安いからダメとも言えません。
値段は「施設ができる幅」を表していて、食事の質は「施設が毎日の食事に何を大切にしているか」で決まるからです。
この記事では、月額料金のうち食事に回るお金がいくらなのか、値段の代わりに何を見れば食事の質がわかるのかを、現場の視点でお話しします。
さくら読み終わるころには、パンフレットの料金表を見る目が変わっているはずです。値段に振り回されずに選べるようになりますよ!
老人ホームに高いお金を払えば食事も毎日おいしい?


「高いお金を払うんだから、せめて食事くらいはちゃんとしていてほしい」
そう思って当然です。
大切な人が今後暮らしていく場所を探すって、たくさん迷ったり悩んだりしますよね。お金を出すのなら、せめて毎日のご飯だけは気持ちのいいものであってほしい。ただ、入居費用が高額だからと言って食事が豪華でおいしいとは限りません。



入居費用のうち、食費にいくら使われているか?を確認しましょう!
▼そもそも「施設の食事はひどいのでは?」という不安がある方は、まずこちらからどうぞ。


月額料金の内訳を見る
毎月払うお金のうち、食費はいくらなのか?をチェックしましょう。
同じ月額でも、お金の使いどころは施設ごとにまったく違います。立地と建物にかけている施設もあれば、人の配置にかけている施設もあります。人手が厚ければ食事介助などにかけられる時間が増えますし、設備が整っていれば調理の手数も増やせます。
月額料金はざっくり4つに分かれます
- 家賃
- 居室の広さ・立地・建物にかかる部分
- 管理費
- 共用部の維持や職員体制など、運営にかかる部分
- 食費
- 毎日の食事にかかる部分
- 介護サービス費
- 介護保険の自己負担分など
高級老人ホームの月額が高くなる理由の多くは、①家賃と②管理費です。
駅に近い、居室が広い、共用部が立派、職員が手厚い。どれも入居する方にとって価値のあるものですが、そのお金は食事の予算とは別のところで動いています。
厚生労働省の「有料老人ホームの設置運営標準指導指針」でも、家賃は「整備に要した費用、修繕費、管理事務費、地代に相当する額等を基礎として合理的に算定したもの」、食費を含むサービス費用は「入居者に対するサービスに必要な費用の額(食費、介護費用その他の運営費等)を基礎とする適切な額」と、それぞれ別の考え方で定めるよう示されています。
食費の目安は1日1,545円
「食費っていくらがふつうなの?」という疑問には、ひとつだけ公的なものさしがあります。
特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院といった介護保険施設には、国が定めた基準費用額という「食事の提供に要する平均的な費用」を国が決めています。
食費は2026年8月1日から1日あたり1,545円。1食あたり約515円です。



1食515円。外食だと安く感じるかもしれませんが、食材だけでなく、作る人の人件費や光熱費も入っています。
実はこの金額、2026年8月に1日100円引き上げられました。
厚生労働省の資料には、近年の食材料費の上昇によって、実際に食事の提供にかかっている費用と基準費用額との間に差が生じている、と書かれています。つまり国のほうが「これまでの金額では実費に足りていなかった」と認めた形です。
この基準費用額は、365日3食を安定して出すための実費に近いお金ですね。
基準費用額(食費)は低所得の方の場合、負担限度額が別に定められており、少しお安くなります。また、基準費用額が適用されるのは介護保険施設のみです。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は異なります。
食費が高い=高級食材?
食費として集めたお金は、食材だけに使われるわけではありません。
作る人の人件費、厨房の光熱費、食器や消耗品。毎日の食事を成り立たせるすべてに配分されます。つまり、食費が月6万円の施設と月4万円の施設があったとき、6万円のほうが食材が2万円分豪華!とは言えません。
厨房が館内にあって職員を抱えていれば人件費の比重が大きくなりますし、外の調理施設から運んでいれば配送の費用も乗ります。同じ金額でも、何にどう配分するかで中身は変わります。



逆に言えば、決して高くない食費でも、旬のものを取り入れたり、盛りつけをていねいにしたり。おいしくなる工夫はいくらでもあるよ!
では、値段の代わりに何を見ればいいのか?
次の章で、見学のときに確認できる3つのポイントをお伝えします。
介護施設の見学に行ったら「この3つ」だけはチェック!


18年間、毎日3食を見てきた私は、値段よりもはっきり差が出ると感じている3つの条件があります。見学に行かれたときにご家族の目で確かめられるポイントを具体例でご紹介します。
①食事はどこで作られているか
同じ献立でも館内の厨房で作って配膳するのと、外の調理施設で作って運んでくるのとでは、口に入るまでの時間が違います。時間が違えば、温度も、香りも、食感も変わります。
高級な施設だから館内調理、という決まりはありません。月額が控えめでも館内でしっかり作っている施設はありますし、その逆もあります。値段では一概に判断できません。
「食事はこちらの建物の中で作られていますか?」「職員さんは同じ食事を食べられますか?」と質問してみてください。食事を大切にしている施設なら、具体的な返答をいただけるはずです。



もし私が質問を受けたら、10分くらい語っちゃうかも(笑)
②パンフの一皿より日常の献立
パンフレットに載っているのは、たいてい特別な日の料理です。お正月、敬老の日、開設記念……。きれいで当然ですし、施設としても一番いい写真を出します。



でもね、親御さんがふだん食べるのは、行事の日ではない日。本当に大切なのは、安心できる日常のご飯なんだよね。
だからこそ、献立表をみましょう。何の変哲もない火曜日に何が並んでいる?汁物と主菜のほかに、小鉢がついている?同じような色の料理が続いてない?細かな献立への配慮に毎日の実力が出ます。
「献立表を見せていただけますか?」「今日のお昼は、何が出ていますか?」と質問してみてくださいね。今日のメニューをその場で答えてもらえたら、食事への熱量が高い可能性大!
▼「なんでもない日の献立」の目利きは、こちらで詳しくお話ししています。


③個人に対応する幅があるか
苦手なものは、事前に別のおかずに変えてもらえるのか。噛む力や飲み込む力が変わってきたとき、食事の形を見直してもらえるのか。食が細くなったとき、どんな対応をしてくれるのか。



嗜好対応は主菜だけと決めているところもあります。手が回る範囲を決めておくのも、全体の質を守るための判断なんだよね。
個人への対応は、コストというより、手間がかなりかかります。だからこそ、月額の高さではなく、その施設がもつ食事への価値観がそのまま出ます。
「苦手なものがある場合、代わりのおかずに変えていただけますか?」「ふつう食以外にも、おかずを刻んだりする場合もありますか?」と質問してみてくださいね。「できます」だけでなく、具体的な例まで話してくれる施設は、実際にやっています◎
>>刻み食?ミキサー食?ドロドロの食事って実際なんのためにあるの?
高級老人ホームが向いているのはこんな人


ここまで「値段と質は別」とお話ししてきましたが、高級老人ホームを否定したいわけではありません。経済的に余裕がある方や、身体的に自立度の高い方(介護があまり必要のない方)、自由に暮らしたい方には向いている可能性が高いです。



食事や暮らしにかける費用に「ふつう」は存在しません。お金の価値観はそれぞれ異なりますからね!
料金が高い施設には、高いなりの理由があります。
- 居室や共用部が広い
- 外出や行事の選択肢が多い
- 好きな食事が選べる
など、どれも入居する方の毎日を確かに豊かにしますよね。
人と食卓を囲むのが好きで「食事を選ぶことそのものを楽しめる方」には、選択メニューのある施設はとても合います。逆に、いちいち選択せず、決まったものを決まった時間に食べるほうが落ち着く方には、選択メニューの良さが届かないかもしれません。合う・合わないは、値段ではなく親御さんの価値観や性格でも変わります。
また、費用は毎月続きます。
入居のときに「これくらいなら」と思えた金額でも、長く続けられる金額であるかどうかを検討しましょう。
費用については、担当のケアマネジャーさんや、地域包括支援センター、施設の相談員に必ず相談してください。年金や介護保険の負担軽減の仕組みは、ご家庭の状況によって使えるものが変わります。
まとめ|費用に関係なく「何を大切にしているか」を見よう


高い入居費用を払っても、大切な人の幸せが保証されるわけではありません。
料金表の数字は、どの施設も正直に出しています。けれども、その数字は「食事を大切にしています」とは教えてくれません。見学の日のなんでもない一皿と、質問したときに返ってくる言葉の具体性をみてください。
まずは気になる施設を資料請求しつつ、見学で見るポイントを押さえて準備を整えましょう。あなたと大切な人の心が晴れる「家」探し、当サイト晴れと家が少しでもお手伝いできたらうれしいです。
▼実際に厨房の様子や配膳を見るなら、見学の時間帯が肝心!






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