大切な人の施設を探しはじめると、一度は気になるのが「食事」ではないでしょうか。検索すると「まずい」「ひどい」という言葉が並んでいて、余計に不安になった……
でも大丈夫です。この記事に辿り着いたあなたが安心できるよう、病院と介護施設で18年管理栄養士をしている私が、老人ホームの食事の裏側を解説します。
私は出勤日、利用者さんと同じ食事を朝・昼・夕の3回食べています。そんな私の結論は、「ひどい」と感じる食事は残念ながらゼロではない、という事実です。しかし、この記事を最後まで読めば、入居前の見学でかなり見抜けるようになります。
さくらちょっとしたポイントを覚えて、実際の見学に備えましょう!
老人ホームの「ひどい食事」はゼロではない


ぶっちゃけた話、18年働いてきて「これは……さすがにちょっと寂しいな」と感じる食事を見た経験はあります。
とはいえ、ひどい食事が出るのは施設に悪意があるからではありません。 どの施設にも共通する「3つの裏事情」があり、その裏事情への向き合い方で差がつきます。



見学の前に「裏事情を理解」しておけば、家族の目でも食事の質が見抜けるよ!
次の章では、施設が抱える3つの事情を解説します。
「まずい」食事が生まれる3つの裏事情


食事を作る側の人間を代表して言い切るのは少し恐縮ではありますが、言わせてください。
「食事をまずく作ろう」と思って料理をする人は、絶対に存在しません。
みなさん一度は料理をしたことがあるのではないでしょうか。どんなに忙しくても、材料が冷蔵庫の中身しか使えなかったとしても。できるだけおいしいものを作りたいですよね。



では、なぜ「老人ホームの食事はまずい」と言われるのか?そこには3つの裏事情があります。
①安全が最優先
高齢の方の食事は、噛む力・飲み込む力に合わせて、刻んだり柔らかくしたり調整します。 病気によっては塩分やたんぱく質の制限もかかります。
安全と治療を積み上げていくと、見た目と食感は家庭のご飯から遠ざかっていきます。



実際に新卒のころの私自身が、安全ばかりを積み上げて「おいしそう」を後回しにした献立を組んでいました。
まずくしようと思っている人は、現場にひとりもいません。 それでも結果として「まずい」が生まれてしまう。ここが施設や病院食のいちばん難しく苦しいところです。
給食の世界では、食品の中心温度が75℃・1分以上に加熱するなど厳しい衛生ルール※があります。家庭料理以上に加熱が必要な場面も多く、「もう少し歯ごたえを残したい」と思っても、そこは譲れません。安全が最優先だからです。調理する側も家庭料理に近づけたい思いを抱えつつ、制約の中でおいしさを探しています。
②大量の料理を一気に作る
家庭なら「作りたてをいただきます!」ができますが、施設はそうはいきません。数十人〜百人以上を同じ時刻に提供できるよう調理・盛り付けを行います。さらに、そこから少ないスタッフが全員へ配膳するため、最後のお部屋に届くころには多少温度が下がります。できたての食感を維持するのも簡単ではありません。
施設や病院の食事には、家庭料理とはまったく別の技術が必要です。



温度を維持する専用の配膳車に乗せて、一人ずつお食事をお届けします。完全に冷めることはまずないから安心してね。
③食材費と人手の限界
1食あたりにかけられる食材費は、外食とは比べものにならない金額です。



ここだけの話、私の施設の材料費は250円……。今どきスーパーで魚1匹くらいの値段やよ〜(涙)
ただ、誤解しないでいただきたいのですが、費用の安さと手抜きは別物です。同じ食材費でも、工夫する施設としない施設で、仕上がりは大きく変わります。
ここまで読んでくださったあなたなら、お気づきでしょうか?この3つの事情は、どの施設にも平等にあります。それなのに、食事の満足度には差が出る。
では、その差はどこで生まれるのか?次の章で順にお話しします。
「量が少ない」「メニューが地味」=ひどいとは限らない


検索でよく見かける不満に「量が少ない」「メニューが地味」などがあります。これは、少し解釈に注意が必要です。それぞれ具体的に解説します。
「量が少ない」と感じたら
施設の食事量は、多くはない場合が多いです。しかし、年齢に合わせた必要なエネルギー量がしっかり計算されており、体の状態を維持できるよう考えています。
実は高齢の方が食べきれる量って、私たちが想像するよりもずっと少ないんです。ご家族の目線で「すこし少ないのかな?」と映るくらいがちょうどいい場合もあります。



ご飯の量やおかずの量は、個人に合わせて調整してもらえるところがほとんどです。「大盛りにもできるんですか?」と聞いてみるのもアリ!
▼実際の食事量をみるには、昼食時に見学がベスト!


「メニューが地味」と感じたら
施設の食事は、365日食べ続ける日常のご飯です。 豪華な一皿より、毎日ふつうに完食できるほうが体にとってはずっと大事です。



私たちも毎日外食のようなご馳走ばかり食べていたら、さすがに飽きちゃうよね?
ただし、「いつ見ても同じような献立」「明らかに冷めたまま出てくる」が続くなら、それは別のサインです。その見分けには献立表が役立ちますよ
18年目の管理栄養士が考える「食事に本気」の介護施設とは


18年間、病院や介護施設の現場に立っている経験から「ここのご飯は大丈夫」と感じるポイントをご紹介します。施設を見学されるときに、ぜひチェックしてみてくださいね。
①残った食事をちゃんと見ている
食事の満足度は、感想より残食に表れます。本気の施設は、残った量をきちんと記録して献立や味付けを直し続けているんです。また、厨房スタッフだけではなく、介護士さんなどフロア職員も利用者さんの人気メニューなどをよく把握しています。



実際に食べている姿を一番そばで見てる職員と栄養士さんの連携がうまくできていれば、食事はどんどん改善されていくよ!
「人気メニューはなんですか?」「完食される方は多いですか?」とスタッフさんに聞いてみると、リアルな反応が見られます。フロアを巡回してる栄養士さんに偶然出会えたら、最高ですね。「栄養士さんと話したい」と言ってみたら、会えるかも…?
②利用者さんの声が献立に反映される
私の勤める施設で、ある利用者さんから「もろきゅうが食べたい」という声が上がりました。もろきゅうには、亡くなった奥様との思い出が隠されていたのです。



すぐに献立に取り入れて、お出しする日付までお伝えしたらね。とーーーっても喜ばれて、私の方がうれしかったな♡
現場のスタッフ(介護士さん、看護師さん)からの情報や、利用者さんご本人の声を積極的に取り入れている施設は、食事に本気で向き合っています。食事を「作業」ではなく「日々の楽しみ」としてとらえている証拠ですね。
「嗜好調査はありますか?」「リクエストはできたりしますか?」って聞いてみてください。ここで具体的なエピソードが出てくれば、食事に対する意識が高い施設だと思います!
③職員が同じ食事を食べている
検食や職員食堂のように、職員が利用者さんと同じものを口にする仕組みのある施設は強いです。 自分が毎日食べるものを、まずいままにはしておけませんからね。



私も出勤時は3食食べています。今日はイマイチだったな…って思うとき、正直あるんよね。そんなときは、その場で調理師さんと相談して改善!!
「職員さんもこのお食事食べられるんですか?」「このお食事食べたことありますか?」と聞いてみましょう!もし本当においしいと思っていれば、食事の良さを語ってくれるはずです。
まとめ|食事を心配できているあなたは探し方が上手です


この記事のポイントをまとめます。
- 「ひどい」と感じる食事はゼロではない
- ただし悪意ではなく、事情への向き合い方の差で生まれる
- 「量が少ない」「地味」=食事がひどいではない
- 高齢者には適切な量がある。日常の普通の食事を大切に
- 本気の施設は、残食のチェックを欠かさない
- 利用者さんの摂取量をすぐ反映している
- 職員も同じものを食べている
- 同じ食事を味わっていれば、リアルな反応が見える



そして最後にいちばんお伝えしたいことがこちら!
大切な人の施設探しは、気になること不安になることがたくさんあるはず。そんな数ある心配の中から「食事」を調べているあなたは、すでに良い探し方をされています。
毎日の食事は、親御さんの暮らしそのものだからです。
「食べる楽しみがあれば、人は何歳からでも元気になれる」
18年働いてきた私の信念です。 あなたと親御さんの心が晴れる「家」、一緒に探しましょう🌸







コメント